暮らしを潤す野草の本棚

 私たちが十把一絡げに雑草と呼ぶ植物たちのなかには、きれいな花を咲かすもの、食べられるもの、薬になるものなど、暮らしを潤してくれるものがたくさんあります。雑草と呼ぶのは失礼で、野草と呼びたいものです。この野草を日々の暮らしに取り入れる方法を教えてくれる本をご紹介します。

「おいしい雑草 摘み菜で楽しむ和食」
 平谷けいこ・赤間博斗著
 摘み菜を伝える会監修
  山と渓谷社 (2016)

 この本は、一つの野草に一つのレシピが紹介してあります。その料理の写真がきれいで、見とれてしまいます。それからこの本には、一つ一つのレシピにキャッチーなコメントと「おいしく食べるコツ」が記載されており、野草の料理を作るモチベーションを高めてくれる本でした。

「おいしい雑草図鑑」
 前田純著
 扶桑社 (2025)

 この本には約160種類もの野草のおすすめ調理法、利用部位、注目の栄養成分、おいしい時期などがコンパクトにまとめて記載されています。「この野草は食べられるのだろうか?」とか「花も食べられるんだっけ?」いう疑問にサッと答えてくれる図鑑です。

「植物図鑑」
 有川浩著
  幻冬舎文庫 (2013)

 この本は、本屋でブラブラとしていた時に、表紙のイラストの淡い恋を感じさせる幻想的な雰囲気と「植物図鑑」というタイトルに惹かれて手に取り、購入しました。野草がモチーフとして登場する恋愛小説で、幸せな気分になりました。それまでは有川浩さんのことは知らなかったのですが、ファンになりました。

 この本に出てくる以下の野草のレシピが、巻末にまとめられています。
  フキの混ぜご飯
  ノビルのパスタ
  タンポポの茎&葉っぱの炒め物
  タンポポの葉っぱのおひたし
  タンポポの花の天ぷら
  ヨモギのチヂミ
  ヨモギの油揚げサンド

 図鑑的に野草を紹介する本とは一味違った野草との付き合い方を教えてくれる本のように思います。

「カスヤナガト 1st 作品集 COLORS」
 カスヤナガト
  宝島社 (2012)

 この本は、「植物図鑑」を読んだあと、本屋でブラブラしている時に目に止まりました。有川浩さんの野草をモチーフとした恋愛小説の淡い雰囲気と、カスヤナガトさんのイラストがピッタリで、手にとってパラパラした他のイラストからも同じような雰囲気を感じ、衝動書いしてしまいました。

 このイラスト集では、有川浩さんの「植物図鑑」の他、夏川草介さんの「神様のカルテ」、大森望さんの「不思議の扉」シリーズ、椿ハナさんの「口遊み」、小川一水さんの「妙なる技の乙女たち」などの表紙を飾ったイラストと、未発表作が掲載されています。

 直接的には野草に関わる本ではないのですが、「植物図鑑」つながりで、植物とのゆる生活のイメージを膨らませることができるイラスト集と感じていますので、ご紹介させていただきました。

「身近な雑草のふしぎ」
 野原の薬草・毒草から道草まで、魅力あふれる不思議な世界へようこそ
 森昭彦
 サイエンス・アイ新書, ソフトバンク クリエイティブ (2009)

 この本を開くと、「「自然界」は風変わりな生き物であふれています。なかでも雑草が変わっているのは、野生のくせに、私たちに寄り添うことを好むことでしょう。実際に、荒地をちょっと耕せば、小さな腕を広げ、こちらが泣きたくなるほど喜びにあふれた顔をして生えてきます。」という文章が目に飛び込んできます。「はじめに」の一段落目で思いっきり相槌を打って、そのままこの本の世界に引き込まれ、衝動買いしてしまいました。

 「プロローグ 雑草を学問する」では、光合成の反応経路やクエルシトリンの構造式が出てきたりして専門的ではあるのですが、野草のすごいところや不思議なところが面白おかしく語られます。そして本編では、様々の野草の一つ一つが写真と綺麗なイラストで紹介され、見分け方や暮らしぶり、特徴が、これまた面白おかしく語られます。

 野草は家庭菜園の敵ではあるけれど役に立つところも多々あり、憎むに憎めない存在ですが、その思いをさらに強くさせられる本でした。

「ヨモギ ハンドブック」

 山下智道
 文一総合出版 (2023)

 この本には、日本で見られる44種類ものヨモギが、写真で紹介されています。全ての写真をご自分で撮影されたそうで、日本全国を周ってこれだけの種類のヨモギを見つけ出す労力には、頭が下がります。 さらに、そのうちの約30種はベランダで栽培されているとのこと。ヨモギ愛に溢れています。

 植物図鑑ですが、「草餅とヨモギの歴史」、「漢方薬に用いられるヨモギたち」といったコラムや、巻末の「全国ご当地よもぎ餅」の紹介も、楽しく読むことができました。

「新装版 山渓フィールドブックス17 薬草」

 井波一雄(解説), 会田民雄(写真)
 山と渓谷社 (2006)

 私は若い頃は会社の独身寮、そこを追い出されてからはアパートに住んでいました。独り身が長くなってきて、自然と触れ合う生活がしたいと思い、庭付きの小さな一軒家を借りて、家庭菜園を始めました。これはそんな頃に目に入ってきた図鑑です。

 薬草の図鑑というと、本格的に探しに行かないと入手できないような野草がたくさん掲載されていたりします。この図鑑にも、そのような野草がたくさんありますが、トウモロコシ、シイタケ、カボチャ、ナス、フキ、ミカン、アサガオなど、身近なものも掲載されているところが気に入りました。

「若杉ばあちゃんのよもぎの力」

 若杉友子
 PARCO出版 (2018)

 若杉ばあちゃんは、日本の気候風土に根ざした野菜利用の知恵などを全国で伝え続けていらっしゃる方です。その知恵は、ヨモギだけで1冊の本になるくらいです。この本の冒頭は、「よもぎは医草、薬草、万病の薬」。

 ヨモギは草餅での利用のように、春を感じさせてくれる野草のイメージがあります。しかし、この冒頭の文のように、薬草としてのパワーがものすごいのだそうです。外用の薬として切り傷の止血、アトピー性皮膚炎に使え、内服薬としては抗がん作用、造血作用、血液浄化作用があり、冷え性にも効くそうです。

 ヨモギを使ったレシピはもちろん、傷薬としての使い方やヨモギの帽子、ヨモギの生葉の枕、ヨモギのお風呂などの外用薬としての使い方、衣類やお米の防虫に使う方法なども紹介されています。ヨモギのパワーを取り入れたい方にオススメの一冊です。

「新版 形とくらしの雑草図鑑 見分ける、身近な300種」

 岩瀬徹・飯島和子
 全国農村教育協会 (2016)

 この図鑑はタイトルに「見分ける」とある通り、似た野草を見分けるコツが写真でわかりやすく記載されており、重宝しています。

 例えばハルジオンとヒメジョオンについては、頭花がつぼみのときに下に垂れるのがハルジオンで、垂れないのがヒメジョオンなのだそうです。その他にも、以下のような身近にみかける似ている野草の違いがわかります。
 ・メヒシバ、オヒシバ
 ・オオアレチノギク、ヒメムカシヨモギ
 ・マツヨイグサ、メマツヨイグサ、コマツヨイグサ、オオマツヨイグサ

 野草のことをもっと知りたいと思ったときに開くと良い図鑑と思います。

「薬草手帖 心身を慈しむために」
 新田理恵
 アノニマ・スタジオ (2023)

 この本には、日本の薬草と季節の行事とか、薬草を生活に取り入れるための器や道具などが紹介されています。野草の特徴や薬効、レシピを紹介する本は多いですが、野草を生活に取り入れて楽しむ方法を紹介する本は、以外と少ないように思います。そういう点では、この本は貴重な本と思います。

「おいしい雑草料理 レシピと薬効メモ」

 小崎順子
 サンクチュアリ出版 (2017)

 野草を使った料理を紹介する本は色々ありますが、その中でもこの本は、スギナの魅力に関する記載が秀逸です。例えばスギナが「ツクシだけじゃなかった スギナの意外なおいしさに注目」として、スギナのフレンチトースト、スギナのおにぎり、スギナの天ぷらが紹介されています。

 それから「自生ハーブに秘められた薬効 雑草の「不思議」を知る」の章では、スギナの薬効が4ページにもわたって紹介されています。その中には、「驚くべきミネラル含有量」として、スギナの含む亜鉛、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ケイ素の量の表があります。しかもスギナの葉と茎が分けてあります。このようなデータは見たことがなかったので、非常に参考になりました。

 ホウレン草やシュンギク、長ネギ、ゴボウの数値も記載されており、例えばカルシウムはホウレン草の155倍といったことがわかります。さらに特筆すべきは、ケイ素を多く含むことなんだそうです。ケイ素の効能が色々紹介されていますが、血液中のコレステロールの値が遺伝的に高い私にとては、「血管の壁にへばりついているコレステールを溶かして血管を広げたり(血圧が下がる)」という特徴がうれしいです。

 スギナの化粧水は、カサカサした乾燥肌やアトピー性皮膚炎に効果的である他、美肌づくりに欠かせない漂白効果もあるそうで、お茶やお酒にして服用するだけでなく、外用薬にもなるということです。

 小崎さんの野草愛を感じられる随筆も魅力的ですし、レシピ本としてだけでなく、野草を生活に取り入れるガイドブックとなる本と思います。